黒澤監督の遺品や自筆絵コンテなどは現在どこかの倉庫に眠ったまま。あまりにもったいないです。これは国が動くべき

雪山の多喜二巡礼(小樽市)…多喜二は戦前に反戦平和を訴え拷問で殺された作家。享年29。彼は『蟹工船』を発表後、弾圧による死を覚悟し25歳で自分の墓を建てている。昨年末、安倍政権が秘密保護法を強行採決した際、多喜二の墓前で民主主義と表現の自由を守る誓いを立てに、正月明けに雪山の墓地へ。時おり鎖骨まで雪に埋まりながら&同行の石屋さんに救出されながら根性で巡礼。彼はベートーヴェンを愛していた為、墓前でベートーヴェンの第九を流し音楽法要。その後、7月に安倍氏集団的自衛権容認を閣議決定した為、7月末に再び多喜二の墓参。地球岬と坪川拓史監督(室蘭市)…地球岬は「北海道の自然百選」で1位に選ばれた景勝地。展望台は高さ120mの断崖にあり地球の広さを実感できる…とのことだが、当日は靄が出て水平線は見えず。無念。だがしかし!素晴らしい出会いがあった。サイトに発表した旅程表を見た映画監督の坪川拓史さんが、地球岬でご家族と一緒に待っていて下さった!坪川監督は第1作『美式天然』(2005)がトリノ国際映画祭でグランプリと最優秀観客賞のW受賞(日本人初)、第2作の『アリア』(2007)がフランスのKINOTAYO映画祭で最優秀観客賞を受賞。最新作の『ハーメルン』(2013)は主演が西島秀俊さんで倍賞千恵子さんや小松政夫さんが共演している。旭山動物園旭川市)…動物を自然に近い環境で育てる“行動展示”で全国から注目される動物園。来園者は上野動物園より多く日本一。人気の理由を知りたくて訪問。巣穴の中を覗けたり、えさ場が見学者に近かったり、見せ方が工夫されていた。何より感心したのは職員手描きの説明文の量!各動物の前には大量の情報が書かれた看板があり、それを読んでるだけで半日かかりそう。「動物のことをもっと知って欲しい」という職員の熱い想いが伝わってきた! 9.襟裳岬日高山脈の突端にあり、岩礁が数キロ先まで延びており絶景。歌では「なにもない」とあったけど、途中の道も含めて雄大な自然を満喫。立待岬/啄木墓(函館市)…石川啄木が肺結核で26年の短い生涯を終えた後、妻は2人の遺児を懸命に育てたが、彼女もまた肺結核に冒され、翌年に2人の子を残して没した。その後、長女は24歳、次女は18歳で亡くなり啄木の血は途絶えた。あまりに悲しすぎる。立待岬函館山の南にあり津軽半島が見える。岬に向かう坂の途中に石川家の墓があり、墓前から湾と函館を一望できる。美しい景観であり、一家で楽しんでいることを切に願う。アイヌ文化…アイヌ世界を学ぶため「アイヌ民族博物館」(白老町)、「二風谷アイヌ文化博物館」(平取町)、「川村力子(かねと)アイヌ記念館」(旭川)の3箇所を訪問。自然に対する敬意あふれる暮らしに感銘。舞踊音楽にも聴き入った。墓標は木製で先端が尖っているのが男性、平らになっているのが女性。旭川ではアイヌ民族の聖地「神居古潭(カムイコタン)」も探訪。「カムイ」は神、「コタン」は村。石狩川上流の峡谷で延々と奇岩が続く。宗谷岬…日本最北端。稚内よりさらに北で最果て感がハンパない。海を見つめていると人生のいろんなことが思い出された。岬には江戸時代に樺太を探検した間宮林蔵銅像が立っている。 5.アイヌ民族弔魂碑(厚岸郡)…徳川幕府が1804年に建立した国泰寺(こくたいじ)の山門脇にある石碑。『アイヌ民族弔魂碑』には次の文が刻まれている「由来厚岸(釧路地方)は美しい自然と資源に恵まれたあなたたちの楽土であった。しかるにその後進出した和人支配勢力の飽くなき我欲により財宝を奪われ、加えて過酷な労働のために一命を失うものすら少なくなかったと聞く。けだし感無量である。我等はいま先人に代わって過去一切の非道を深くお詫びすると共に、その霊を慰めんため このたび心ある人びとと相計り東蝦夷発祥のこの地へ、うら盆に弔魂の碑を建てる』(1977年8月15日)。本土の人間によるアイヌ侵略について「過去一切の非道を深くお詫びする」とこれほど明言している石碑があるとは!これまで金銭と時間の両方の問題から、北海道は函館と小樽の「墓地」しか行ったことがなく、今年に入り道内で3回の講演依頼があったおかげで、初めて各地を探訪することができました。知床半島釧路湿原宗谷岬アイヌの聖地、ずっと訪れたかった場所ばかり。貴重な体験をさせて下さった石材店さん、そしてお忙しいなか会場に足を運んで下さった皆さん、本当にありがとうございました! 1月に小樽を、GWに道南、そして夏に北部、中央、東部を弾丸探訪。たくさんの優しい人との出会い、美しい風景、美味しい食べ物に、親友が北海道に惚れ込み移住したのも納得。全国のコンビニお客様満足度アンケートで第一位に輝く北海道のセイコーマート。店内の厨房で店員が調理する“ホット・シェフ”が温かくて美味しい。中でもカツ丼とおにぎりはコンビニとは思えない美味さ。大阪に店出して。博物館網走監獄(網走市)…かつて重罪犯を収容した網走刑務所の旧建築群を移築した野外博物館。広大な敷地に多数の監獄が復元されており、その規模の大きさに驚いた。裁判所もあり、丁寧に見学したら1日がかりになる。人形が生活をリアルに再現。現地で『網走番外地』の石井輝男監督の墓があることを知り市内の墓前へ。高倉健さんの字で“安らかに”と彫られていた。有島農場(ニセコ町)…広大な“有島農場”を経営する作家・有島武郎は、貧しい農民のために農場を解放し、無料で80戸の小作人たちに譲渡した。翌年、45歳で自死。資産家の彼が理想主義から資産を放棄した現場であり胸熱。九人の乙女の碑(稚内市)…稚内公園にある慰霊碑。1945年8月、日本降伏後もソ連軍は北方領土を攻めてきた。終戦の5日後、8月20日樺太(現サハリン)の郵便局にも戦火が迫り、「皆さんこれが最後です、さようなら、さようなら」と9人の若い電話交換手が青酸カリで命を断った。8月15日を過ぎてからの集団自決であり記憶に留めるべき悲劇。開陽丸(江差町)…幕末、日本最強といわれた開陽丸を復元!江差沖で沈没しており、船内には海底から発見された多数の砲弾など遺物を展示。甲板を歩いているとタイムスリップした気分に。お盆期間の訃報で衝撃的だったのは俳優ロビン・ウィリアムズさんの自死。享年63。『ガープの世界』『いまを生きる』『グッドモーニング、ベトナム』など多数の名作に出演。大好きな俳優だった。ショックすぎる…。名優の死に黙祷。オバマ大統領の追悼談話「ロビン・ウィリアムズは私たちを笑わせ、泣かせてくれた。それを必要としている人たちのために、無限の才能を惜しみなく発揮してくれた」。ハンフリー・ボガートとの共演が話題を呼んだ往年の大女優ローレン・バコールも他界。享年89。無事、九州から帰宅!8日間の走行距離は2127km!長崎の浦上天主堂被爆マリア像、現在設置されているのはレプリカなんですが(実物は厳重保管)、それでも激しく心を揺さぶられました。鳥居が半分だけ吹き飛んだ山王神社・ニの鳥居も…。鹿児島では西郷隆盛のひ孫、陶芸家の西郷隆文さんとお話する機会があり、西郷ファンとして夢のひととき。佐賀では敗戦直後にヤミ米を拒否して餓死した裁判官・山口良忠さんの墓所を現地で知り、急遽墓参。住職の奥さんが案内して下さり、突然の訪問にもかかわらずお茶と菓子まで頂き優しさに感動。自然では初めて見た阿蘇山の巨大な火口と、雲仙の熱泉の煙に驚きました。ところで!佐賀・伊万里市の『黒澤明記念館』、はるばる訪ねたのに既に潰れていました(移転ではなく閉館!)。黒澤監督の遺品や自筆絵コンテなどは、現在どこかの倉庫に眠ったまま。あまりにもったいないです。これは国が動くべき(国立の黒澤記念館を作るとか!)。