爆弾。スズキタゴサク本名ではないと思うが、霊感と記憶喪失。目的は破壊行為ではなく世間に対する自己主張、能力の証明?他人の犯罪に乗っかっただけ?

貰い物の一冊。直木賞が決まる前には読んでおこうと思い隙間時間にちまちま読んでいた。知ってる地名がポンポン出てきて臨場感があった。これはちょっと期待し過ぎたかな…。真相が気になって、一気読みしたものの、面白いのか面白くないのかよく分からないまま、終わってしまった感じ。スズキの気味の悪い長い語りに途中から読むのが苦痛になって、少しイライラしてしまった。全体的にいろいろと冗長過ぎな印象です。登場人物誰にも共感できないし、私には合わなかったかな。話題作なので期待したのですが、評価も二分されてるようですね。直木賞候補作。面白かったです。先が気になって結構ガツガツ読んでしまいました。スズキの得体の知れなさや、警察官の「人間味」、そういうものがとても魅力的だったと思う。初めて読む作家。おずおずと読み始めたのだが途中から止まらなくなり、先に読み始めていた併読本たちをすっ飛ばして一挙に読了となった。全く先が読めない展開、登場人物もそれぞれよく書けてるしスズキタゴサク対警察の攻防も読み応え充分。でもほんの少しの物足りなさを感じるのはスズキタゴサクには最後まで誰も手に負えない怪物であって欲しいという期待が裏切られたからか。映画「ジョーカー」がつまらないのは怪物ジョーカーが所詮は悩んだ末の人間の化身だったというストーリーにガッカリしたからなのだが、それと似た感覚かも知れない。「無敵」のスズキタゴサクは怖い。現実のいろんなことに、無数のタゴサクが投影されているように感じられ、無力感に襲われる。爆弾という悪意の塊の武器の容赦ない破壊力もとてつもなく恐ろしい。ただ、その無力感と抗いながら、それぞれのやり方で、それぞれに自分を暴かれながらタゴサクに立ち向かう刑事たちがとてもよかった。勝利をおさめることができなくても、闘い続ける姿が、タゴサクを通すことで、リアルに描かれていたのではないだろうか。とてもインパクトと読み応えのある1冊だった。呉勝浩の最高傑作だと帯は煽るが、最高傑作は『おれたちの歌をうたえ』のままである。一方、安倍晋三元総理の暗殺事件に示すように、散弾銃や拳銃、爆発物などはDIYできる時代となった。『同志少女よ、敵を撃て』のように、現実が物語世界に近づいてしまったのである。よって作者の最高傑作でないにも関わらず、本作が直木賞を受賞しても何ら不思議はない。このように僕の態度は推しではない。スズキタゴサクや類家のセリフがメタ小説っぽいのだ。しかし、タゴサクが爆発を予言して都民を恐怖に陥れる、そのような事件は近未来、発生するだろう。取調室での心理戦小説。1部で行われる《九つの尻尾》が面白かった。スズキタゴサクの考え方は理解に苦しむけど、命の平等性だとか、自分勝手こそ人間の真実だとか、全く分からないという訳でもなく。自分の中の「ふつうの正義」を考えさせられたように思う。『爆弾』は大なり小なり誰しもが心の中に秘かに抱えているものなのかも。『おれは逃げないよ。残酷からも、綺麗事からも』スズキタゴサクが濃すぎて真犯人や動機などが薄れてしまった感はあるけど楽しめました。直木賞候補5作目。無差別爆破テロを予告するスズキタゴサクvs.翻弄される警察。じわじわと緊迫感が増し、尻すぼみすることなく最後まで突き進む展開に夢中になった。取調室でのタゴサクの〝芯を食わせない奇妙な話術〟に、不謹慎ながらはじめはニヤニヤ。しかし徐々にその様相が変わり、スリルのギアがあがっていく。そして警察官たちのドラマの絡ませ方もいい。警察官、犯人、個々の物語を描き、馴染ませることで出るコクと奥行きは絶品だ。また、心の中の蟲の存在を自覚したとき、人はいかに生きる選択をするかを問う作品にも読める。呉作品の進化がとまらない!この作家さん初読み。新聞の書評(「心の底に突き刺さる強烈な威力」)に誘われて読んだが、残念、期待していたものが違ったようだ。被疑者と刑事の緩いやりとりが続き、被疑者のヒントはヒントと思えず、いつか面白くなるかなと読み続けたが、警察署外での捜査ももたつき有り得ないミスもある。そもそも発端の破廉恥事件、そんなに重大なことだろうか?結局、最後何がどうだったのかも私には良く分からず。煽るような文章で書かれた被疑者と刑事、刑事と刑事のマウントの取り合いが刺さるかどうか、私には刺さらずでした。長々とした会話シーンが中心なので面白かったけど読んでいて少し疲れた。タゴサクのクイズ(というより暗号や謎解き)の他にも視点人物がそこそこいて、特に取り調べしている刑事陣がそれぞれのバックボーンはあれど何故か似通ったキャラクターに感じてしまって読んでいてややこしかった。個人的には映像作品として見ていた方がもっと面白いと感じたかも。最後ゆかりを疑ってしまって申し訳なかった。次の爆弾はどこに仕掛けた?手に汗にぎる連続爆破ミステリー。取調室で狂気の有力被疑者と対峙する警察官たちは、自らの能力を誇示するかのような彼のクイズを正しく解けるのか? 警察vs. 犯人の知的攻防と現場の爆弾探しの緊迫感が程よく交錯するスピード感溢れる展開を期待したが、正直期待外れ。取調室のクイズの場面が冗長過ぎてその分現場の場面がおざなり。おまけに真の爆弾犯は彼じゃなく、途中から「乗っ取った」とか、どの駅に仕掛けられていたか知らなかったとか判明して幻滅した。著者はどうも「言葉遊び」から逃れられないらしい。スズキタゴサクの言うことが気持ち悪いと思いながらも全部とは言わなくても一部分は誰しもが思っていることもあるのではないか。9つの問答もわかるような、わからないような。出てくる登場人物にはしていることが理解できないことも多くて共感は少なかったけど、ドロドロした人間模様が見えた。こんな自分に蓋をしてきた人達の中で、ちょっと変わっていると思われている類家が一番まともに見える。わたし『性善説』を信じます。人間の本性を改めて考えた作品でした。無差別爆弾テロ犯人は終始人間は利己主義的で性悪説を証明するような話を理路整然と展開しているように感じた。『差別』って根本的に人間の特質的な要因が大きく影響していて自己利益に取捨選択していく上で起きているってな感じで…胸がムカムカして途中何度も本を閉じたくなった。何度も書かれた異常な性癖等も全身駆け巡る不快感…これは逃れられない不快感による偏見を見事に自分自身に再現してくれた部分。本文に『「悪だ。お前は悪だ」いい切らねばならない疑念があっても言いきらねば切らなくては駄目なのだ。』とあったが、正直自分自身も話にうーん唸りながらやみくもに否定したい気持ちだけが上滑り。だけど差出人不明の命令に、爆破予定の現場へ飛び込んでいく刑事達、身体を張って爆弾をもつ明日香を止めた幸田沙良巡査にも、みられたとっさの行動。目の前の人を助けたいという良心この善は砂糖まみれの想像かもしれないけどホッとする。命令だから、仕事だからとは結果に対し後付けの理由はあっても、良心からの行動の結果であることは間違いなく。人間に私利私欲関係無しの善は存在している。画面のほとんどは爆弾事件を巡った取調室での会話劇のため、話が大きく動くまでに時間がかり、特に序盤はやや冗長に感じる部分もあった。 しかし、会話の中で徐々に登場人物それぞれの人間性や、命の価値について丁寧に紐解いていかれるのが楽しく、どんどん読み進めてしまった。 世間で正しいとされてる倫理観について「あなたはどう思うか?」常に問いただされてる気分でした。