夜空に泳ぐチョコレートグラミー。町田さんのデビュー作。すり鉢みたいな形をした大きな水槽みたいな町に住む人々の連作短編。

とても面白かった。作者のデビュー作なんですね。5編の連作短編は、どれも重く切ないのですが、希望に満ちたエンディングがとても良い読後感を得られます。最後にどんでん返し的なミステリーっぽい展開の話もあったりで楽しめます。解説にもありましたが、5編それぞれの書き出しの1行が本当に秀逸。いきなり掴まれ一気読み必至。5つの短編はどれも、今この場所で生きて行くことの決意、生への誓いを感じさせられる。それの際たるものが表題作の「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」であろう。女子が男子を殴る、というのはちょっと心地悪いのだが、晴子と啓太のひたむきさにグッとくる。「生きるとか生きていけないとか、大人でも考えて苦しむものなんだ(中略)仕方ないよな、これからも、もがきながら泳いでいくしかない」。晴子の秘密のお気に入りの場所から眺める夜空とすり鉢の街。そこでみんな生きている。「溺れるスイミー」もよかった。凄い本を読んでしまった。1作目から衝撃。久々に大好きな本に出会った。勿体無くて、なかなか読み進められなかった。5つの短編がなんとなく繋がっているのだけれど、各作品が密度が濃く、よく纏まっていて、凄く良かった。解説にも書いてあったが、昔、知り合いが「書き出しの上手い作家さんは凄い」と言っていたが、この本の書き出しはどれも惹きつけるものがある。同じ作者が書いているとは思えないほど、色の違う5作品。すっかりファンになりました。今のところ今年一番。自分のことを愛してくれる人がいるって良いよね。 私も「私の事が好きだったあいつに慰めてほしいな」とか、都合よく考える日もある。しかも辛い時だけ。 彼等が私にくれた言葉を思い出すと、自分は存在していい人間なんだなと救われる… みんな少なからずはあるこんな経験を、ドラマチックに言語化してくれている。 あと、3つ目の話も好きかなぁ、これは過去うんぬんじゃなくて、今の自分の境遇に似ていた。 カバーが爽やかで可愛いし、ティーンズむけなのかな?って思ったけど、そんなことなかった読んでよかった。表題から、ちょっとファンタジーっぽい作品かな〜と思って読んだら、全く違くて、かなり重い話だった。いろんなテーマが詰め込まれた連作短編集だった。どの話も甲乙つけがたいくらい印象深いけど、1番好きなのはやっぱり表題作かな。子供の優しさや逞しさに触れると、すぐ涙腺がやられてしまいます…。啓太がいい子過ぎです。終盤で、幸喜子と啓太に芙美という頼れる人がいるのが分かって安心したし、晴子が桜子に引き取られたことが分かってほんとに良かったと思った。その後が気になる人物が多いので、続編とか出ないのかな。R-18文学賞大賞受賞作『カメルーンの青い魚(大胆な仕掛けどこ)』は幸喜子が苦手すぎたのと、若干携帯小説みたいで読むのがしんどかった。解説にある「それぞれの書き出しが素晴らしく巧い」にはかなり納得だけど、わりとだらだら全体的に薄ぼんやりしていたので、引き込まれることはなかった。『溺れるスイミー』と涼しげな装画は良い。『52ヘルツのクジラたち』は全く合わなかったけど、と書くと、こちらはそうじゃなかったと言いたいところ。だけど、やっぱりなんか合わなかった。町田そのこさん初読み。 題目を含んだ短編5編の作品。いじめ、DV、不倫と登場人物達がそれぞれに苦悩をかかえ生きづらさを感じ、生きていく糧を求めてどこかを探している。この作品はただ重たいだけではなくて、人のぬくもりと希望を見いだしてくれる物語でもある。海の底は真っ暗でも上をみれば、一筋の希望の光が差し込み、そっと手を差し伸べてくれる場所がある。じんわりと心に明かりを灯して優しさと強さを与えてくれる、そんな作品。「カメルーンの青い魚」と「波間に浮かぶイエロー」は意外な仕掛けもあって、とても楽しめた。繋がる短編集。「カメルーンの青い魚」は流石三浦しをん氏と辻村深月氏から絶賛されただけある。からの表題作。さっちゃんの一途さ。啓太が健気。「波間に浮かぶイエロー」これはその時まで騙された。圧巻。「溺れるスイミー」トラック運転手との恋。結構意外な結末。「海になる」最低DV夫に吐き気。いずれもきっとこの世ではあるに違いないリアル。晴子にも優しい人との出会いがあって良かった。どの話も切ないし、心傷む事も多いけど、強く生きようとする姿にコチラまで突き動かされました。海になるは、読んでいてかなり辛かったけど…死神ではなく、助けてくれた男性がその後に彼女が一緒に生きる糧になって良かった。人と人との繋がりってとても素敵だなぁと感じました。町田さんのストーリーは、心が揺さぶられます。他の小説も読んでみたくなりました。個人的に読み終わった後の読了感が良かったわ。まあ、感想はどうやって書いたらいいのか悩むんだけれども。過酷な状況でも懸命に生きていく人々の姿を描いた連作短編集。確かに帯に書いてある様な時になったらそう思うんだろなと思わされたな。全体的に話は重たいんだけれども、だからこそなんか自分の中にストンとうまくハマる感じだった。個人的には波間に浮かぶイエローが良かったし最後のとこで泣きそうになったわ。他の作品もちょっと気になってくるな。連作短編は一気に読んじゃう方だけど、今作は1編読む度に本を閉じて余韻に浸ってしまった。クジラに次いで2作目だったけど、テーマや設定に重いものを持ってくるなぁ。盛り込んだな?って感じの設定をちゃんと消化してくれるからさすがの筆力。彼らほど重いものを抱えてはおらずとも、誰しもが感じうる生きづらさに響く言葉が随所にあった。表題作がその意味では一番響いたかな。サキコ目線の1編目で気になってた啓太がちゃんと意思を持って生きてて安心した。 あたしたちはこの広い世界を泳がなきゃいけない。 各短編の題名の付け方が好き。R-18文学賞受賞作の「カメルーンの青い魚」めちゃくちゃ好き!これがデビュー作とはすごい。最初笑っちゃうから「コンビニ兄弟」の感じなのかと思っていたらそうでもない。短編だけど少しずつ繋がっているところも好き。重い話も多いのに、どこかのほほんとした雰囲気が漂っているのでそこまで重くは感じなかった。自分は「どこか」に焦がれるタイプではなく「ここ」が好き。でも、「どこか」に焦がれて出て行ってしまう人の気持ちもわかる気がした。再読したい本だ。同じ人物が跨って登場する連作短編集。各話の主人公や主要な人物は、親しい者の喪失や生まれながらの境遇に対する偏見から、それぞれ息苦しさの感覚を有しています。『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』に見られた、片親の主人公が感じる周囲の人間たちの空気感は秀逸に描写されています。ディテールを個々人の感じ方で埋める上手さと、叙述トリックのような変化球のテイスト。居場所を変えて生きること、また居場所を変えずに生きること、それぞれの人物たちの論理や感覚をリアルに描き出した作品が集まっていて、良質な短編集だと感じました。