信仰村田沙耶香。8本の短編集。いい意味でも悪い意味でも1回読んだだけでは消化しきれない話が多かった。本書は比較的読みやすい気がした

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評判がいいので期待して読んだ。小説いくつかと、小説と思い読み始めたら本人のことだとわかるエッセイいくつかと。相変わらずの村田世界。しばしば地球から離れる。少し雪舟えまみたいな。SF寄りのような。「信仰」の書き出しがぐっとくる。「書かなかった小説」が好き。「クレージーさやか」とメディアで言われることに対してこんな気持ちを持っていたなんて。装幀・装画:鈴木千佳子。【信仰】「なあ、俺と、新しくカルト始めない?」【生存】65歳の時点で生きている可能性を数値化した「生存率」と、全て忘却し「野人」【土脉潤起】野人の姉に会いに。女性三人で家族に 【彼らの惑星へ‥】イマジナリー宇宙人は行き場のない地球人を救っている【カルチャーショック】この世界には「均一」と「カルチャーショック」の二つの街【気持ちよさ‥】「個性」が大嫌いだった村田沙耶香の思う「多様性」【書かなかった小説】ヨドバシで買うフリーズドライの自分のクローン【最後の展覧会】Kはロボットと「テンランカイ」を開く/短編集「新しくカルト始めない?」から始まる表題作の信仰。 綿密に計画を立てて…とかではなく、「原価いくら?」が口癖の周りを冷めさせてしまう主人公が現実以外を信仰しようとする角度で面白かったです。カルマとまで言われていて笑ってしまいました。 傍から見るとみんなが絶賛する自分にとってはよく分からない高級なものと、騙されて買った浄水器はさほど変わらない感覚は分かります。 他の短編、「生存」「土脉潤起」なども秀逸で近未来のお話だけど、人間のひと握りが野生化していく姿がとても恐ろしかったです。村田さんの本は、読んでどういう感情になるべきか、積極的に示してこないのが好きだ。「生存」と「土脉潤起」の世界、特に「土脉~」の主人公の姉の「ぽう」という鳴き声が印象に残る。滑稽なような悲しいような気もするし、滑稽と悲しいこそ一番ないような気もする。「書かなかった小説」面白かったし、シーン番号飛ばしながら書くの、いい手法だなあ。でも全然ちゃんと書いてるので反則。「最後の展覧会」は星新一みたいで、他のに比べるとオチがついてると思うし、これで終わってくれると落ち着くので、なんだかんだ親切な構成だと思った。意味はよくわからないがめちゃくちゃ面白かった。 コンビニ人間を読んでから、世界観がすごすぎて、読んでなかったけど、言葉にできない。なのに面白いってすごすぎる。 『信仰』『生存』『書かなかった小説』が印象的。 ネタバレ 信仰 現実信仰って自分も 生存 生存率に支配された世界って、現代だと何に支配された世界なんだろ 気持ちよさという罪 個性と多様性一つでこんなに考え込むかね 書かなかった小説 自分のクローンほしい 本体が乗っ取られるってこわ 最後の展覧会 地球が滅んで、展覧会ってなんなんや今作も村田ワールドに引きずり込んで頂きました。「私、騙される才能がある人間になりたいの」表題作である『信仰』では今までの信仰に対する捉え方をグラグラ揺さぶられ考えさせられた。他の短編もどれも味わい深く、今までの自分の価値観を見つめ直させてくれる。『最後の展覧会』で締め括られる構成も好き。私も、もしKとマツカタを鑑賞出来たらそれはきっと忘れ難い旅になるだろうなぁ。多様性に関するエッセイを読めたのも良かった。やっぱり村田さんは大好きな作家さんです。エッセイが、良かった。中学生くらいまでは人と違うことが自身が苦しい要因で、それを理由に排除される可能性もあった。大学くらいから、受容されるようになり楽になった。変だと言われていたところを、好きだと言われたときは、幸福で夜泣いたという村田さんのことが、わたしは勝手に愛おしい。物語では信仰が好きだった。村田さんの本では、登場人物が世間に対して疑問を持つという形で進められる形が多かったが、「信仰」では登場人物も充分カルトだったのが新鮮だった。自分が正しいと信じ込んでしまっている人間はなによりも恐い。ほとんどの人が、多かれ少なかれ、何かに騙されながら生きてる。みんな騙されるな、というそれも「現実」というカルト。生存率を高める技術開発素晴らしい信仰もまた。世界反転。村田さんワールド。原価を知ってる女性がブランド物を買う女性に「騙されてるよ!」と教えるが迷惑がられる。現実を信仰してるか、幻想を信仰してるか。誰でも何かを信仰していて、他のことを信仰している人のことを彼女みたいに「違うよ」と教えてあげたりするが紙一重の差なのかもしれない。村田沙耶香さんの短編とエッセイ。どれも村田さんらしく良かった。エッセイを読んであーそういえば「クレイジーさやか」って呼ばれてテレビにたくさん出ていた時あったなぁと思い少し心が痛くなりました。人と違うことを認める社会になる表題作のみ読了。カルトで一儲けしたい石毛とマルチに騙されたがゆえに今度はスピリチュアルを盾に取り仕返しをしたい斉川。美容、ブランド品などに傾倒する友人たちとそれにはハマりきれなくて原価厨およびリアリズムへと嵌っていく主人公永岡。どれもこれもそれぞれ信仰を持っており、そして「本物を知っている」という幻想を抱く。「夢を持つ」って、信仰を持つことなのかもしれない。脈々と得体のしれないものにすがり、現実から目を背けたり、盲信したい。それが幸せになり、楽になるための一歩なのだろうか。とよいなぁと思わずにはいられません。村田沙耶香のSF短篇集(といってももはやかまわないだろう)。新興宗教を興す「信仰」、自然に還ることをモチーフにした「生存」「土脉潤起」、自らのクローンとの生活「書かなかった小説」、遠い未来で開かれる展覧会「最後の展覧会」など。好みは「信仰」「生存」「書かなかった小説」。やはり『殺人出産』や『生命式』は少々ハードルが高いので、『丸の内魔法少女ラクリーナ』と並び入口としておすすめできる1冊。表題作のみ読了。カルトで一儲けしたい石毛とマルチに騙されたがゆえに今度はスピリチュアルを盾に取り仕返しをしたい斉川。美容、ブランド品などに傾倒する友人たちとそれにはハマりきれなくて原価厨およびリアリズムへと嵌っていく主人公永岡。どれもこれもそれぞれ信仰を持っており、そして「本物を知っている」という幻想を抱く。「夢を持つ」って、信仰を持つことなのかもしれない。脈々と得体のしれないものにすがり、現実から目を背けたり、盲信したい。それが幸せになり、楽になるための一歩なのだろうか。コンビニ人間芥川賞受賞した村田沙耶香さんの新作を読みました 村田さんの作品の中の「男性の扱われ方」が私は大好きなんです コンビニ人間では 風呂場に閉じ込められて、三度の食事を洗面器に入れて出される男性が出てくるし、 今作、信仰の中の男性の表現は、 「元気に動き回っていた○○(男性の名前)が私の一撃でふっと動かなくなった」 とか。 村田さんの男性への距離の取り方、その達観とあきらめ、そしてユーモアが私は大好きです 「元気に動き回っていた…」って表現、叩き潰される前のゴキブリみたい…… では!表題の「信仰」を含め8本の短編集。いい意味でも悪い意味でも1回読んだだけでは消化しきれない話が多かった。他の作品と同様に現在蔓延している考え方を考えさせられる話が多かったが、とくに「彼らの惑星へ帰っていくこと」、「気持ちよさという罪」の2本のエッセイが自分には深く刺さった。非常に共感を覚える一方で、村田さんの抱える罪意識に対して言葉にできない感情に支配されしばらく動けなくなった。自分がそれに加担していたかもしれない罪悪感からなのか、村田さんの覚悟に感嘆、恐怖したからなのか、今はまだよくわからない。最近の単行本何冊かは少しぶっ飛びすぎていて、理解の範疇をはるかに超えていた気がしたけど、本書は比較的読みやすい気がした(読みやすいというだけで、理解できたかどうかは別問題w)。「信仰」はおもしろかった。「気持ちよさという罪」は短いながらも色々と考えさせられた。学校その他、様々なところで使われている「個性」や「多様性」という語の裏がこれほどあからさまに書かれるのはさすがというべきか。信仰は読みたかった!現実に勧誘?し続けたら、恋人、親友、妹から疎まれ遠ざけられる主人公。マルチ詐欺、新興宗教の立ち上げを同窓生から誘われるが、逆にみんなが信じる幻想に洗脳されたいという願望を打ち明ける。ラストシーンで現実が自分のカルマだと言われ、洗脳されていても、いなくても、みんなが見ている幻想は見られない、という悲劇がコミカルに描かれている。エッセイは個性と多様性という言葉の取り扱いについて考えさせられた。反社会、犯罪的な多様性はやっぱ、許せないし、胸糞悪いのに、わかったつもりで使ってしまっていた。反省